ここでは、Illustratorの基本操作としてオブジェクトを変形させる方法について説明をします。また説明に用いるソフトのバージョンは「Illustrator 24.0」です。
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オブジェクトを変形する前に
アピアランス属性
後述する「ワープ効果」などでオブジェクトを変形した場合、変形したはずのパスが見た目の形と違うために戸惑うことがあるかもしれません。Illustratorには「アピアランス属性」という、オブジェクトの基本構造を変えずに外観だけをカスタマイズするプロパティがあります。オブジェクトの見た目と実際の形が違って見えるのは、このアピアランス属性が機能しているためです。
Illustratorにおける「アピアランス」とは「オブジェクトの見た目」のことを指しますが、「アピアランス属性」とはアピアランスの構成要素のことで、「塗り」「線」「不透明度」「効果」といったアピアランスパネルで操作できる要素すべてを指します。
アピアランスの分割
アピアランスを分割すると、効果によって変形したオブジェクトのパスは、元の形ではなく見た目の形で作成されます。オブジェクトの見た目と実際の形が違っていると印刷時のトラブルの原因になることがあるため、印刷業者にデータを入稿する場合などに「アピアランスの分割」を行います。
- ワープ効果などで変形させたオブジェクトを選択します。
- メニューバーの「オブジェクト」から「アピアランスを分割」を選択します。
- アピアランスが分割されます。
ただし、アピアランスを分割すると効果は修正編集できなくなりますので、分割前のデータを残しておくか、作業の最終段階で行うようにしましょう。
見た目を変形させる方法
オブジェクトの見た目を変形させるには、アピアランス属性の「効果」を使います。この「効果」には様々な種類のものがあり、効果メニューに表示されるものすべてがそれに当たります。効果メニューはアピアランスパネルの「新規効果を追加」ボタンをクリックするか、メニューバーの「効果」から確認できます。
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また効果メニューには「Illustrator効果」と「Photoshop効果」があり、その違いは「ベクター効果」であるか「ラスタライズ効果」であるかです。ラスタライズ効果とは、ベクタ—データではなくピクセルを生成する効果です。
基本的に、Illustrator効果はベクターオブジェクトに、Photoshop効果はラスタライズオブジェクトに適用することができます。ただしIllustrator効果のうち、3D効果・SVGフィルター・ワープ効果・変形効果・ドロップシャドウ・ぼかし・光彩(内側/外側)は例外で、ベクターオブジェクトとラスタライズオブジェクトの両方に適用することができます。
ワープ効果を使う
ワープ効果では、波形や旗など様々な形にオブジェクトを変形させることができます。また効果適用後の修正などは、アピアランスパネルで行います。
- 描画ツールで変形させるオブジェクトを作成し、選択ツールでオブジェクトを選択します。
- メニューバーの「効果」、またはアピアランスパネルの「新規効果を追加」ボタンをクリックして、効果メニューを表示します。
- 効果メニューの「ワープ」から、任意の形状を選択します。(ここでは「旗」を選択します。)
- オブジェクトが変形します。
複数のオブジェクトから構成されるオブジェクト全体に効果を適用する場合は、予めそれらを「グループ化」しておく必要があります。グループ化は、複数のオブジェクトを選択した状態で右クリックから「グループ化」をクリックするか、ショートカットキー(Ctrl/⌘ + G)を使いましょう。
ブレンドを作成する
ブレンド機能とは、異なったオブジェクト間で色や形が変化するオブジェクトを生成する機能です。
- 描画ツールで、色や形の異なるオブジェクトを2つ作成します。
- 「ブレンドツール」をダブルクリックし、「ブレンドオプション」を表示します。
- 間隔という項目のドロップダウンメニューから「ステップ数」を選択し、その値を入力します。(ここでは3を入力します。)
- 1で作成した2つのオブジェクトをそれぞれクリックします。尚、この時に最初にクリックしたオブジェクトが開始位置となり、最後にクリックしたオブジェクトが終了位置になります。
- 作成したオブジェクト間に、色や形が変化するオブジェクトが生成します。
ブレンドによって生成されたオブジェクトは、見た目の形を変形させているためにパスを持ちません。生成されたオブジェクトの形状に沿ったパスを作成するには、メニューバーの「オブジェクト」の中にある「ブレンド」から「拡張」を選択します。
エンベロープを作成する
エンベロープ機能とは、前面のオブジェクトの形に沿ってオブジェクトを変形させる機能です。
- 変形させるオブジェクトと、変形用のオブジェクトを作成します。
- 変形用のオブジェクトを、変形させるオブジェクトの前面に重ね、両方を選択します。
- メニューバーの「オブジェクト」の中にある「エンベロープ」から「前面のオブジェクトで作成」を選択します。
- エンベロープが作成されます。
エンベロープによって生成されたオブジェクトは、見た目の形を変形させているためにパスを持ちません。生成されたオブジェクトの形状に沿ったパスを作成するには、メニューバーの「オブジェクト」の中にある「エンベロープ」から「拡張」を選択します。
実際の形を変形させる方法
見た目の形ではなく実際の形を変形させるには、オブジェクトのパスそのものを編集する必要があります。またパスの編集に用いる方法は、主に次の3つです。
クリックで拡大
ダイレクト選択ツール
「ダイレクト選択ツール」はオブジェクトのパスを選択するツールです。オブジェクトそのものを選択する「選択ツール」とは異なり、「ダイレクト選択ツール」はオブジェクトのアンカーポイントやセグメントといた細かい部分をピンポイントで選択することができます。また選択したパスをドラッグアンドドロップすることで、オブジェクトを変形させることができます。
アンカーポイントの追加と削除
アンカーポイントの追加や削除は、「ペンツール」でクリックして行います。オブジェクトのパスの上にペンツールを重ねるとポインターの横に『+印』が表示され、またアンカーポイントに重ねると『-印』が表示されます。アンカーポイントは、ポインターがプラスの時に追加され、マイナスの時に削除されます。
コーナーポイントとスムーズポイント
「ダイレクト選択ツール」でアンカーポイントを選択すると、「コントロールパネル」に「選択したアンカーポイントをコーナーポイントに切り替え」というボタンと、「選択したアンカーポイントをスムーズポイントに切り替え」というボタンが表示されます。これらをクリックすることで、オブジェクトのアンカーポイントを切り替えることができます。
【補足】角を丸くする
オブジェクトの角を丸くする方法は以下の2つがありますが、「ライブコーナー」はオブジェクトの実際の形を変形させるのに対し、「スタイライズ」は見た目の形を変形させる方法です。まずは長方形ツールで、長方形のオブジェクトを用意してみてください。
ライブコーナーを使う
- 長方形オブジェクトに、コーナーウィジェットが表示されているか確認します。表示されていない場合は、メニューバーの「表示」から「コーナーウィジェットを表示」をクリックしましょう。
- オブジェクトを選択した状態で、選択ツールのポインターをコーナーウィジェットに近づけます。
- ポインターの横に弧のアイコンが表示されたのを確認し、そのまま内側にドラッグアンドドロップします。
- オブジェクトの角が丸くなります。
また正確な数値でオブジェクトの角を丸くしたい場合は、オブジェクトを選択した状態で、「コントロールパネル」または「変形」パネルの「角丸の半径」欄に、任意の値を入力します。またコーナーウィジェットをダブルクリックして値を入力することもできます。
スタイライズを使う
- 長方形オブジェクトを選択します。
- メニューバーの「効果」、またはアピアランスパネルの「新規効果を追加」ボタンから「効果メニュー」を表示します。
- 「スタイライズ」カテゴリーの中にある「角を丸くする」を選択し、半径の値を入力して「OK」をクリックします。
- オブジェクトの角が丸くなります。
ショートカットキー
Windows | Mac | |
---|---|---|
ブレンドの作成 | Alt + Ctrl + B | Option + ⌘ + B |
ブレンドの解除 | Alt + Shift + Ctrl + B | Option + Shift + ⌘ + B |
エンベロープの作成 (ワープで作成) |
Alt + Shift + Ctrl + W | Option + Shift + ⌘ + W |
エンベロープの作成 (メッシュで作成) |
Alt + Ctrl + M | Option + ⌘ + M |
エンベロープの作成 (最前面のオブジェクトで作成) |
Alt + Ctrl + C | Option + ⌘ + C |
複合パスの作成 | Ctrl + 8 | ⌘ + 8 |
グループ化 | Ctrl + G | ⌘ + G |
グループ解除 | Shift + Ctrl + G | Shift + ⌘ + G |