ここでは、Illustratorの基本操作として画像トレースの方法について説明をします。また説明に用いるソフトのバージョンは「Illustrator 24.0」です。
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画像トレースの前に
Illustratorでは、JPEGやPNGなどのラスターデータ(ビットマップ画像)をベクターデータに変換することができ、これを「画像トレース」といいます。例えば、鉛筆などでスケッチした絵をスキャンした画像(ラスターデータ)は、Illustratorに取り込むことはできても鉛筆のラインをパスとして編集することなどはできませんが、この画像トレース機能を使えばベクターデータとして自在に編集することができます。
画像の取り込み
Illustratorに画像を取り込むには、メニューバーにある「ファイル」から「配置」をクリックして、表示されるウィンドウから任意の写真などの画像を選択します。その後アートボード上でクリックすると、画像が配置されます。または「ファイル」から「開く」をクリックする、もしくは画像が保存されているファイルから、直接ドラッグアンドドロップして画像を取り込むこともできます。
リンク画像と埋め込み画像
画像を取り込むとまずは「リンク画像」として配置され、リンク画像であることを示す対角線が表示されています。リンク画像とは、Illustratorが他の場所に保存されている画像(保存先の画像)を表示している状態の画像のことをいいます。ゆえに保存先の画像を削除したり保存場所を変更したりすると「リンク切れ」になり、再度リンク付けをしない場合は、Illustrator上で画像が表示されなくなります。
対して「埋め込み画像」は、画像データそのものがIllustratorに記録されている画像のことをいいます。リンク画像のように、保存先の画像を削除したからといって、Illustrator上でその画像が表示されなくなくなることはありません。ただし、その分リンク画像に比べるとIllustratorのファイルサイズは大きくなってしまいます。
リンク画像を埋め込むには、リンク画像を選択した状態で「コントロールパネル」または「プロパティ」パネルのクイック操作の下にある「埋め込み」をクリックしましょう。また埋め込み画像をリンク画像に変換する場合は、同じく「コントロールパネル」のクイック操作から「埋め込み解除」をクリックし、保存場所とファイルの種類(PSDもしくはTIFのみ)を指定して「保存」します。
画像をトレースする
画像をトレースする
- まずは任意の画像をIllustratorに取り込み、画像の「埋め込み」を実行します。(リンク画像でも構いませんが、その場合は画像を管理するようにしてください。)
- 画像を選択した状態で、「コントロールパネル」または「プロパティ」パネルのクイック操作から「画像トレース」をクリックし、トレースプリセット(ここでは「16色変換」)を選択します。「画像トレース」パネルから操作する場合は、「トレース」をクリックします。
- 画像がトレース画像(ベクターデータ)に変換されます。
クリックで拡大
トレースをやり直す場合は、「コントロールパネル」の「プリセット」のドロップダウンリストから選択し直します。
トレース画像をパス化する
- 作成したトレース画像を選択します。
- 「コントロールパネル」または「プロパティ」パネルのクイック操作から「拡張」をクリックします。
- トレース画像がパス化されます。
パスに変換すると、トレースをやり直すことはできなくなります。またパスの単純化を行うことで、余分なアンカーポイントを削除しスムーズなパスに変換することができます。手順は下記の通りです。
- パス化したとレース画像を選択します。
- メニューバーの「オブジェクト」の中にある「パス」から「単純化」をクリックします。
- パスが単純化されます。
画像トレースパネル
「画像トレース」パネルが表示されている状態で画像を選択すると、パネル内のオプションが使用可能になります。パネル上部に表示される6つのアイコンは、一般的なワークフローに従って名前がつけらてた「ショートカット」プリセットです。それぞれのショートカットに、それぞれのトレース結果を生成するための変数が設定されています。
■ 自動カラー
イラスト風(ポスタリゼーション)のトレース画像を作成します。
■ ハイカラ―
高い精度で、写真のような(フォトリアリスティックな)トレース画像を作成します。
■ ローカラー
単純化された、写真のような(フォトリアリスティックな)トレース画像を作成します。
■ グレースケール
グレースケールのトレース画像を作成します。
■ 白黒
モノクロ画像へと、単純化したトレース画像を作成します。
■ アウトライン
画像を黒いアウトラインに単純化します。
手動でカスタマイズする場合、画像トレースパネル左下の「プレビュー」にチェックを入れて、トレース結果を確認しながら各項目を調整していきましょう。
■ プリセット
「写真(高精度)」や「白黒のロゴ」といったトレースする画像の種類や、「3色変換」や「6色変換」といったトレースする際の色数を指定します。
■ 表示
トレースした画像の確認、またその画像の表示を変更するための項目です。右端にある目の形をしたアイコンは、長押しするとトレース前の元の画像を比較確認することができます。
■ カラーモード
トレースした画像のカラーモードを指定します。またカラーモードを「カラー」を指定した場合は、下に「パレット」という項目が増え「カラー(色の数)」の値を指定できます。また「グレースケール」を指定した場合は「グレー(グレースケールの正確さ)」、「白黒」を指定した場合は「しきい値(少ないほど黒色になります)」のそれぞれの値を指定します。
■ パス(詳細)
パスの数(元の画像をどれくらいの精度でトレースするか)を調整します。
■ コーナー(詳細)
角の度合い(トレースの際に曲線となる部分の精度)を調整します。値が大きいほど、スムーズな曲線が描かれます。
■ ノイズ(詳細)
ノイズを調整します。値は大きいほどノイズが少なくなり、小さいほど精密になります。
■ 方式(詳細)
左側のアイコンを選択する場合、切り抜かれたパスが作成されます。右側のアイコンを選択する場合は、隣同士が重り合ったパスが作成されます。
■ オプション(詳細)
「曲線を直線にスナップ」は、わずかに曲がった曲線を直線とみなすかどうかを指定し、「ホワイトを無視」は、元の画像の白色を透明扱いにするかどうかを指定します。
【補足】トレースプリセットの保存
前項の手順で「画像トレース」パネルからそれぞれの項目の値を指定したら、そのトレース結果をいつでも再現できるよう保存することができます。
- 「画像トレース」パネルを使用して、プリセットのそれぞれの値を指定します。(画像トレースパネルが表示されていない場合は、メニューバーの「ウィンドウ」の「画像トレース」にチェックを入れましょう。)
- 「プリセット」項目の横にある、横三本線のアイコンをクリックします。
- 「新規プリセットとして保存」をクリックし、プリセットの名前を入力して「OK」をクリックします。
- トレースプリセットが保存されます。
保存したプリセットを削除する場合は、上記手順2のアイコンから「削除」をクリックし、名前を変更する場合は「名前を変更」をクリックしましょう。